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志賀直哉「范の犯罪」 大正2年10月 [志賀直哉]

続いて志賀直哉の「范の犯罪」です。
この物語は非常に面白くて(いろんな意味でな)、映画化したら面白いんじゃなかろうかと考えているのですが、
今どき志賀直哉なんて流行らないし、まあ映画化されることはないだろうなあ。
このブログを気まぐれに覗いた方で、気まぐれに映画化しようと思った方、
ぜひぜひ実行してみて下さいませ。

では、参りませうか。

あ、「支那」という表現を致しますが、
作品の表現をそのまま使っているだけで他意は一切ございません。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

支那人奇術師・范はナイフ投げの名人だ。
二間(約3.5m)先に女を立たせ、その女の体に向かって輪郭を描くようにしてナイフを投げる。
しかし、ある日舞台の上で事故が起きた。
范の投げたナイフが女の頸動脈に刺さり、女が即死したのだ。
女は范の妻だった。

范は裁判にかけられることとなり、まず范の関係者が証言を求められた。
奇術座の座長は、ナイフ投げの演技は決して難しいものではないが、
絶対に失敗しないとも言い切れないと証言し、
范の投げたナイフが妻に刺さったのは過失か故意かは分からないと述べた。

続いて、助手が范と妻の夫婦仲について以下のような証言をした。
范も范の妻も至極真面目で温和な人間ではあるが、
二年前に妻が出産し、産まれた子が僅か三日で死んでから夫婦仲が悪くなっていった。
范は妻を愛せない自分を責め、キリスト教に傾倒するようになっていったが、
自分には妻と離婚する理由はないという。
一方、妻は范と離婚しても帰る家はなく、たとえ不和であっても范と一緒にいるしかなかった。

最後に范が呼ばれ尋問が始まった。
范の証言によれば、妻が産んだ子は范の子ではなく、妻の従兄の子であったという。
しかも、妻の従兄と范は親しい友人関係にあり、范の結婚も妻の従兄の周旋で成立したという。
さらに、赤子が生後間もなくで死んだのは、妻が乳房で窒息させたからだともいう。
すべてを知りながら范は妻を許そうと思ったがそれもできず、
しかも苦しむ范を妻は残酷な目つきでただ見ているだけだった。
そんな日々が続くうち、范はいっそのこと妻が死んでくれたらと思うようになっていたという。

妻が死んだ前日の晩、范は妻が食事の準備にもたついていたことに腹を立て、
興奮した范は、「本統の生活」を手に入れるために妻を殺してしまうべきだ、
妻を殺して牢屋に入ることになったとしても、このままの生活よりどれほどマシだろうかと考えるに至った。

しかし、朝になると妻を殺すという強い意志も段々と薄れていき、そんな弱い自分に悲しさすら覚えた。殺してやろうと思ってはみたものの、実際に行動を起こすにはまだ越えるべき大きな壁があったのである。
そしてその日、事件が起きたのである。

舞台の上で妻と顔を合わせた范は、その日にナイフ投げの演技を選んだ危険をそのとき実感した。
范が投げるナイフはいつもよりも一寸もずれた位置に刺さり、
范は落ち着こう落ち着こうと必死に気持ちを落ち着かせようとした。
しかし、何本目かのナイフを投げる瞬間、
妻が不思議そうな顔をしたのが見え、そのまま力任せにナイフを投げると、
そのナイフは妻の頸に刺さり、妻の命を奪った。

全ての供述を終えた范は、今は無罪になろうとすることだけが全てだと言い、
妻の死を悲しむ気持ちは全くないと快活な表情で述べた。
范の尋問を終えた裁判官は、何かしれぬ興奮を感じ、
その場でペンを取ると、「無罪」と書いた。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

今回は少々まとめるのがむずかしかったです。
ほとんど対話で物語が進められていくので、
何を事実としてまとめればいいのか、悩みました[たらーっ(汗)]

↓ポッチリしていただけると幸いです!

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「范の犯罪」は新潮文庫『清兵衛と瓢箪・網走まで』で読むことができます[犬]

清兵衛と瓢箪・網走まで (新潮文庫)

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  • 作者: 志賀 直哉
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1968/09
  • メディア: 文庫



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志賀直哉「剃刀」 明治43年6月 [志賀直哉]

さて、記念すべき1作目は志賀直哉の「剃刀」です。
志賀直哉は現代ではすっかり流行らなくなっておりますが、
初期の犯罪小説は結構面白いんじゃないかなあ。
どうかなあ。
では、スタート!

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

麻布六本木で床屋を営む芳三郎は、名人との声も名高い。
が、今日はひどい風邪を引いていて寝込んでいる。
ちょうど秋季皇霊祭の前の忙しい時期だが、
人手が足りない。何故なら、以前雇っていた源公と治太公を解雇してしまったからだ。
芳三郎は以前、源公と治太公と同様に店で小僧をしていたが、
その腕が認められて親方の娘と結婚し、店を受け継いだ。
以来、源公と治太公は素行が悪くなり、店の金に手を出すようになったので、
芳三郎は二人を解雇せざるを得なくなったのだ。

祭日前の稼ぎ時でありながら、体は思うように動かない。
しかし、客は芳三郎の腕に期待している。働かないわけにはいかない。
芳三郎の妻のお梅は夫の体を気遣い、夫を休ませようとするが、
そのお梅の気遣いが芳三郎の神経を余計にいらだたせる。
さらに、研磨の依頼をされた剃刀のキレが悪いと顧客からクレームを付けられ、
芳三郎は熱で震える手で剃刀を研ぎ直すが、それもうまくいかない。

そこへ一人の若者が髭を剃りにやってくる。
若者は、これから女郎屋にでも行こうとしているようだ。
芳三郎は若者の髭を当たり始めるが、
きちんと研げていない剃刀ではいつものようには剃れない。
しかし、若者はそれにはお構いなしで、やがて眠ってしまう。
芳三郎は泣きたいような気持ちになるが、
若者はそんな芳三郎の前で大きな口を開けて眠っている。
そのとき、剃刀の刃が引っかかり、若者ののどから血がにじんだ。
それまで客の顔を一度も傷つけた事のなかった芳三郎は、
発作的に剃刀を逆手に持つと、刃が隠れるまで深く若者ののどに突き刺した。
それと同時に、芳三郎の体には極度の疲労が戻ってきた。
立ち尽くす芳三郎の姿を、三方に据えられた鏡だけが見つめていた・・・・。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

「剃刀」は、新潮文庫『清兵衛と瓢箪・網走まで』で読むことができます!

清兵衛と瓢箪・網走まで (新潮文庫)

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